名残の風情~家傳「山椒子持ち鮎」~のご案内
「鮎」と一括りにいっても、
日本料理の世界では、季節によりその表情を変えます。
3月のおひな祭りを過ぎると、体長8センチにも満たない「超若鮎」が登場します。
とても初々しく塩焼きでも、もちろん唐揚げでも一口で食べられます。
そして日本画の世界では、青紅葉の下に泳ぐのは、若鮎と決まっています。新緑の頃ですね。
いよいよ6月になると、太公望おまちかね、天然鮎の解禁となります。
そして今回タイトルにした、子持ち鮎は産卵前の締め括りです。いわば名残の風情です。
弊店でつかう名残の鮎は、とても大きく肥えていて、「絶頂期」とでも言いましょうか...とにかく本当に大きいんです。大事な事なんで、何回も書きます。
産卵前って、卵に栄養分をとられて、身は痩せてるんじゃないの?というのが定説ですが、この鮎は皮肌にとっても脂があって、持つと手が脂でヌルヌルになります。
白焼き後
証拠に、皮肌は黄色く良い脂があることを証明しています。
そして、焼く前の大きさは、1匹の重さが100グラムもあります。
焚く前に白焼きにします。この際、もし皮を焦がすと、そこが穴があきやすいので、とにかく低温で焼きます。すると徐々に子(卵巣)に火が入り、子がパンパンに膨らんできます。
さっきも書いたように、良い脂を持っている為、焼き目が付きやすいので焦げないように注意します。
焚いた後でも、20センチはございます。
ただただ「子持ち鮎」というと、縁起がそさそうな響きですが、鮎は年魚です。
年魚とは、生まれたその年のうちに、一生を終えてしまい、翌年には卵から孵化した次の世代となります。
この年魚というとらえかたを、京料理の世界では、永続しないという考え方で、お祝い事には使いません。
代々続いていく...という捉え方もあると思うのですが、
一生が短いという解釈なのかもわかりません。
不思議なものです。
それゆえ、鮎の塩焼きや、この「山椒子持ち鮎」を私どものお祝い会席の献立には入れません。
鮎はお祝い事には使わないのが、京料理のルールなんだと教えられてきました。
でも先に書いたように、「子持ち鮎」はとても美味しいので、食べていただきたい、京料理さくらい家傳の逸品です。 店主謹白
https://kyononitakimon.com/collections/frontpage/products/1komochiayu